【チャレンジャー紹介】坂尾英彦『継ぎたくなかった農家の長男が起こす農業革命』~人と人が紡ぐ物語~

本記事では、選ばれしチャレンジャー7名の一人、坂尾英彦さんをご紹介します。

image2.jpg

坂尾英彦さんは、千葉県銚子市でHenneryFarmを運営しています。銚子市は、横に長く広がる地形で、沿岸部は特に冬は暖かく、夏は涼しく野菜の生育には最適な地域です。さらに海から常に吹き荒れる潮風は野菜や土壌にミネラル成分を与え野菜を甘くしてくれます。この恵まれた土壌を活かし、坂尾さんは主に きゃべつを2回、とうもろこしを1回の3耗作を行っています。坂尾さんはご自身を農家の息子にしては特徴的と仰っていましたが、そのトレードマークともいえるアフロヘアーと、農業の繋がりはどこにあったのでしょうか。

農家を継ぐまでのストーリー

坂尾さんはなんと代々受け継がれてきた農家の12代目なんだそうです。しかし、幼い頃から農業を間近に接してきた坂尾さんは、あまり農家を継ぐことに前向きになれなかったんだとか。そんな坂尾さんは高校を卒業し親の説得により一度は就農するが、東京への憧れから上京!渋谷でクラブDJとアパレルスタッフをつとめ、ストリートカルチャーにどっぷりはまって行きました。ストリートカルチャーに魅力を感じた坂尾さんは、2年で地元へ戻り作業としての農業、自分のやりたいことだった音楽とファッションをやることを決意します。

昼間は畑、夕方と夜はお店!23歳で起業し、アメリカから洋服やレコードを輸入し、実店舗・ネットショップにて販売していました。そのようにして日々を過ごす坂尾さんでしたが、地元の人口減少、ネットショップでは価格競争、、、売上は立てども利益が薄く、大手商社には勝てない、と商品を輸入して販売することの限界を感じたんだとか。そんな時、日々作業に携わっていた農業の奥深さを実感しました。農業は、種の種類、栽培の方法から、自分達にしかないオリジナルのストーリーがある、さらに今まで行ってきた輸入業のノウハウも活かせると考え、実家の農家を継ぐことを決めました。

image1.jpg

人と人の繋がりが生み出すお裾分け文化へ

坂尾さんは農作物の生産だけにとどまらず、農業の体験事業や、銚子市での農泊推進協議会を設立しグリーンツーリズム事業にも取り組んでいきます。中でもワーケーション事業の構想からは、坂尾さんの事業に対する強い想いが伝わってきました。従来のワーケーション事業のようにバケーション色が強いものではなく、現地での人との繋がりを重視したコミュニティのきっかけづくりにしたい!例えば現地の農家のお手伝いをする代わりに、その日の朝食を頂いたりと、物の売買だけでは生まれない価値を生み出そうとしています。今回の新型コロナウイルスや自然災害で、私たちは無力さを実感し、また改めて人と人の繋がりの尊さも実感しました。坂尾さんはこのワーケーション事業にお裾分け文化を根付かせることによって、新しい価値やコミュニケーションのあり方を提案しようとしています。

image3.jpg

新しい価値が生まれるコミュニティを

最後に今後の展望について伺いました。坂尾さんはまずこのアワードで、このプロジェクトに興味を持ってくれる人、アイデアに共感してくれる人に出会い、ブラッシュアップして行きたいそうです。事業を継続させるためのマネタイズ等の課題はある、と仰る坂尾さんですが、坂尾さんにしか出せない魅力で皆さんを惹きつけ、日本で唯一の価値を生み出すコミュニティが、銚子の街から始まろうとしています。

(文・公益社団法人ジャパンチャレンジャープロジェクト事務局 高橋勇作)

2020年9月30日