本記事では、選ばれしファイナリスト7名の一人、瀬戸山匠さんをご紹介します。
ラオスの農村で味わった大家族で朝食を食べる幸福感
今回紹介するのは、埼玉県から株式会社Share Re Greenの瀬戸山匠さんです。7年前から農業に関わり、現在は野菜をつかった加工品をつくっています。
瀬戸山さんが農業に関わることになったきっかけは、10年前から通い続けている「ラオス」での経験でした。そもそも瀬戸山さんがラオスに行くことになったのは「経済が発展していないのになぜ国民の幸福度が高いのか?」という疑問からはじまり、当時流行っていた「小学校を建てよう!」という活動を始めたことからでした。今とは違い、まだ主要道路もボコボコで、「ラオスではじめてエスカレーターがついた!」と騒ぐほどだったそうです。
瀬戸山さんのnoteをご覧になりたい方はこちら
そんなラオスの農村には、隣近所の人も混ぜて、まるで大家族のように食卓を囲んで朝ごはんを食べる文化があったそうです。瀬戸山さんは幼少期から両親が共働きだったため、朝食を一人で食べることが多く、その一体感や賑わいになんとも言えない感動や幸福感を味わいました。その経験をきっかけとして「家族や周りの人との絆の強さ」に焦点を当てながら「主観的幸福感が高い理由」の研究を始めました。ここでの主観的幸福感とは「健康」「経済」「関係性」が整っていて、「私は幸せである」と胸を張って言える状態のことです。そして商品を開発するため、小さいお子さんを持つ父母に話を聞く中で、その子供たちを喜ばせてあげたい、さらに自身の親への感謝の気持ちがわき、絶対にカタチにしたいと強く思うようになりました。
子どもにとっての“朝食”を「消費」ではなく「楽しみ」に
皆さんの周りにも、子供の離乳食後の野菜嫌いに悩んでいる人はいませんか?食育に壁を感じていたり、不安感を抱えている人は少なくないでしょう。ここの課題とラオスでの経験から、子どもにとっての“朝食”を「消費」ではなく「楽しみ」に変え親にとっての”食育”の難しさや孤独感を解消できないかと考え、完成したのが今回の「やさいのキャンバス」です。この商品では上記の課題を解決するのみならず、子供が苦手な野菜が食べられるようになったり、お絵かきが上手になっていたり、朝から子どもの成長を喜ぶことができます。「おいしい朝食」「かんたんな朝食」はこれまでたくさんあったけれど、朝食が楽しみになる「たのしい朝食」という新しい形を生み出すことに挑戦しています。食卓のコミュニケーションも、食育も、まずは「たのしい!」という感情から始める提案です。「やさいのキャンバス」は家族の絆をつなぎ、大人になってからも忘れられない大切な思い出の一片となるでしょう。
「やさいのキャンバス」とは?
やさいのキャンバスは野菜のペーストをチューブに入れペンにして、キャンバスに見立てた食パンに簡単にお絵かきができ、完成したらそのまま食べることができるというものです。現在、緑・赤・黄色の三色があり、緑はブロッコリーとホウレンソウ、黄色はとうもろこしと玉ねぎ、赤はにんじんとビーツといった一見子供が苦手そうな野菜に、蜂蜜と米油を混ぜることで食べやすい味に仕上げています。この商品は食育に必要な知識や調理スキルだけでなく、「食事を楽しめること」「家族や誰かと一緒に食事をする楽しさ」を生み出しています。「将来の夢」をテーマにお絵かきして記念撮影をしたり、いつの間にか野菜嫌いを克服!なんてことも。実際に「やさいのキャンバス」のオンラインワークショップに参加した両親からは”みんなで「いただきます!」をしてパンを頬張った時の笑顔はまさに家族との絆を感じる瞬間だ”と幸せの声が上がっています。
「やさいのキャンバス」のこれから
今後は現在の三色に加えて青・黒・白の新色開発に力を入れながらもゆくゆくは日本国内のみにとどまらずラオスの農村でもチームを組んで東南アジアの主要都市部に流通網を持つビジョンも描いています。また一本から買い足せるように、皆さんの最寄りのパン屋さんで販売することで、パンと同じ身近なものとして親しまれる商品を目指しています。親と子どもの核家族同士が「やさいのキャンバス」で子どもの成長や食育の悩みを共有し、つながり、家族のコミュニティの枠が拡張されていく、そんな世界を実現するために。
ライター:事務局 樽本